展示室紹介
2.謎の海岸生活者 デスモスチルス
テーマ2では、謎の動物デスモスチルスについて展示しています。世界でもこれだけ多くのデスモスチルスの標本を展示した博物館は、足寄以外にありません。
デスモスチルスという動物をご存じですか?
デスモスチルスは、絶滅してしまって今は子孫が生き残っていません。誰もデスモスチルスの生きた姿を見たことがないのです。どんな姿をしていたか、何を食べていたのか、どんなところに住んでどんな生活を送っていたのか、そしてなぜ絶滅してしまったのか、謎だらけなのです。
そこで、化石を研究することでデスモスチルスはどんな動物かを調べているのです。
デスモスチルスの最初の発見は、1876年アメリカのカリフォルニアで歯が見つかりました。柱を束ねたような歯をしていることから、ギリシャ語の束ねるdesmosと柱stylusを合わせて、柱のよう歯を持った動物の意味でデスモスチルスと名付けられました。日本語では束柱類と呼ばれています。 ガラスケースに入っているのは1898年に世界で最初に発見されたデスモスチルスの頭の骨の化石のレプリカです。 (Desmosutyls japonicus 戸狩標本:国立科学博物館所蔵 NSMN-PV5600、岐阜県瑞浪市産) |
|
歯しか見つかっていなかったデスモスチルスですが、その後頭の骨や全身の骨の化石も見つかってきました。世界で最初に発見された全身の骨は、1933年、当時の南樺太のロシアとの国境に近い敷香町気屯(シスカチョウケトン)で発見された気屯標本です。 (Desmostylus hesperus 北海道大学所蔵 UHR18466) 当時の北海道帝国大学の地質学の教授の長尾巧さんらによって発掘されました。 |
|
世界で初めて発見された全身骨格の気屯標本は、多くの研究者によって復元(生きていた頃の骨の様子を組立ること)されています。 左の写真は、発見者の長尾教授による1936年の復元のレプリカです。牛などをモデルに組み上げたと言われています。当時、本物の化石を鉄骨で組んだフレームに針金で縛り付けて復元されていました。 |
|
左の復元は、当時京都大学の亀井教授による1970年の復元のレプリカです。サイやバクをモデルにしたと言われています。長尾復元に比べ、指が5本から4本になったことと、肘がきちんと関節し、背が高いことが特徴です。 | |
左の復元は、東京大学の犬塚博士による1997年の復元です。これ以前の復元は、他の動物をモデルにして復元されていました。この復元は、骨そのものの特徴を整理し、関節がどのくらい曲がるかや、どこからどこまでどのくらいの量の筋肉がつくかなど、解剖学的な視点から復元されています。 | |
この標本は、犬塚復元の元となった歌登第1標本です。 (Desmostylus hesperus 地質標本館所蔵 GSJ-F7743 北海道歌登町産出) 頭骨に若干の変形があるものの、全身の骨がよく保存されており、関節の可動域や、筋の付着を観察することができます。 左の復元は、可動関節を組み込み、筋肉をゴムで再現した復元です。 |
|
デスモスチルスの仲間は、デスモスチルス、パレオパラドキシア、ベヘモトプス、アショロアの4属があると考えられています。(犬塚1999) ベヘモトプスは、デスモスチルスやパレオパラドキシアより古い時代の動物で、デスモスチルスの仲間の謎をとく重要な鍵になる動物です。 左の写真は、1980年に矢吹兄弟によって発見された足寄第2標本で、世界で唯一の復元模型です。 (Behemotops katuiei 足寄動物化石博物館所蔵 AMP22 北海道足寄町茂螺湾産出) |
|
ベヘモトプスと一緒に写っているのは、パレオパラドキシア津山標本です。(Paleoparadoxia tabatai 岐阜県津山市郷土博物館所蔵) | |
アメリカのスタンフォード大学の素粒子研究施設の建設現場から発見されたパレオパラドキシアスタンフォード標本です。 (Paleoparadoxia sp. カリフォルニア州立大学バークレー校所蔵) 非常に大きな標本で、頭骨の一部を除きほぼ完全な形で産出した貴重な標本です。写真の、復元模型は左の前肢・後肢が歌登標本と同様に可動します。 |
|
カイギュウの仲間 1970年、北海道滝川市で発見されたタキカワカイギュウは8mを越す大型の海牛で、寒流系の海に住んでいました。 道東地方でも、鮮新世〜更新世前期の海成層から、タキカワカイギュウの化石が見つかるようになりました。肋骨や頸椎などを展示しています。 タキカワカイギュウと現生のジュゴンやマナティーの頭骨もくらべることができます。 (2002年4月新設) |
|